住宅は賃貸、購入どちらが得なのか? 決めるポイントはライフスタイル

新しく始める生活を思い描きながら、自分や家族との住まいを探したり選んだりするのは楽しいことですね。

でも同時に、自分や家族の現在の状況や未来の計画まで含めて、たくさんの条件や選択肢を考えなければならないので、すまい選びは大変な作業です。

住み替えの時に考えることは

賃貸を続けるか?思いきって購入するか?

ではないでしょうか。

この疑問は昔から議論され続けている難しい問題ですが、自分に最も合った選択ができるように、改めてそれぞれの特徴やメリットデメリットを考えてみたいと思います。

 

賃貸or購入、経済的にはどっちがお得か?

賃貸か購入かを考えるときに、金額的にどっちが得なのかが、一番大きなポイントですよね。

よく聞く悩み方として、「毎月賃料を払い続けても自分のものにならない賃貸住宅か、ローンを組んで支払えば最終的にその住まいは自分のものになる購入か?」というのがあります。

でも本当に経済的にどっちが得なのでしょうか?

ケースシミュレーションをしてみましょう。

ケーススタディー 1

夫は会社員で45歳、妻も会社員で42歳 子供はいない。

今は会社の借り上げ社宅に住んでいるが、いつまでもいられない。共働きなので外食も多く、またミュージカルやコンサートスポーツ観戦なども多いので、都心に近くそれなりにオシャレな街に住みたい。

夫婦二人とはいえそれぞれの趣味や自由な時間を確保するために寝室以外にもう一部屋ほしいので、2LDKは必要。少しゆとりのある広さとして60㎡は欲しい。

このような希望を満たすような物件を考えてみます。

 

購入の場合

現在新築マンションの価格は大変高くなっています。
最寄駅が東京のターミナル駅(渋谷や新宿)から15分くらいのところにあり、その駅から歩いて10分ぐらいの新築マンションの価格は方角や眺望の良い物件だと1㎡あたり百万円を超えるぐらいします。

60㎡のマンションで6,000万円から7,000万円ぐらいの価格です。

ここで、7,000万円のマンションを購入したときかかる費用を計算してみます。

頭金として貯金や両親からの援助で2,000万円を用意し、
残りの5,000万円を80歳までの35年ローンで支払うこととします。

このときの総支出額を計算してみましょう。

頭金:            2,000万円

借入金:          5,000万円

ローン金利:フラット35の固定金利 年利1.10% として35年間で約1,030万円

取得費用(ローン手数料、保証料、登記費用など): 200万円

固定資産税:         10万円x35年=350万円

マンション管理費:       15,000円/月x12カ月x35年=630万円

マンション修繕積立金:    14,300円/月x12カ月x 35年=600万円
(新築時は10,000円/月が築20年からは20,000円/月として計算)

占有部分の補修・リフォーム:   200万円

80歳までに必要な金額は 約10,000万円(1億円)

80歳でローンの返済が完了するまでに1億円以上のお金が必要になります。

 

賃貸の場合

賃貸物件の賃料は、その物件がもし売買されたとしたときの金額に対して4%程度の収入があるように設定されることが多いです。

たとえば6,000万円の物件であれば年間240万円、月20万円程度の家賃とされるとします。
(周辺の物件の相場やマンションの年数などによって変わります。)

この家賃月20万円を80歳まで払い続けると8,400万円となります。

20万円 x 12ヶ月 x 35年= 8400万円

購入するより1,600万円少なくて済む計算になります。

賃貸の場合は管理費や修繕積立金、固定資産税といった費用はすべてその物件のオーナー(貸主)が負担します。
ボイラーが壊れたり、ふろのタイルがはがれたりといった修繕費用もすべてオーナーの負担となりますので、家賃以外の支出は必要ありません

 

このように購入と賃貸を比較するとローン完済までに支払う総額は購入の方が多くなります。

 

しかし、ここで賃貸の方が得だと言えるとは限りません。

その理由はローンの支払いが終わったあとの
不動産物件の価値が支払った金額の
差額より大きいかどうか
どちらが得かを判断するための大きなポイントになります。
この例の場合、80歳になった時にそのマンションが1,600万円以上で売れれば、購入しておいた方が最終的に手元に残る金額は多くなります。

もし、80歳になったときに1,600万円の頭金で高齢者住宅(老人ホーム)に入ろうとするのであれば、購入でも賃貸でも一生に支払う住宅費は全く同じになります。

購入した後に価格が上がったりする場合や、あるいは価格があまり下がらないマンションを手に入れた場合には、売却時には手にできる金額が増えるので、購入の方が得な場合もあります。

逆に経済状況が変化して不動産全体の価格が下がるようなことが起きれば、賃貸の方が有利になることも考えられます。賃貸の場合、住宅は古くなると賃料は安くなりますので、安い家賃の物件に引っ越しをすることによって更に総支払賃料を抑えることも可能になります。

 

購入の場合は、よく住宅のチラシなどに「ローン支払いは家賃並み」とか、「最終的に自分のものになるからお得」といったコピーが書かれていますが、購入すると、ローン支払いのほかにも固定資産税、リフォーム代などいろいろと必要な支出があるので、注意が必要です。


つまり、ローン完済後の住宅の価値が高ければ購入の方がお得、住宅の価値が下がる場合は賃貸の方がお得だと言えます。

 

 

ケーススタディー 2

夫40歳会社員、妻38歳パート勤務、子供1人小学校低学年

現在比較的都心に近い借り上げ社宅に住んでいるが、子供も大きくなり勉強部屋も欲しい。

多少通勤時間が長くなっても、郊外で子供をのびのびと育てたい。子供のサッカークラブへの送り迎えなどのためにクルマが必要。

購入の場合

ターミナル駅から20分ぐらいの駅が最寄駅で、駅からバスなどを使って行く住宅地には一戸建てが多くあります。

一戸建ての場合は駐車スペースがあれば駐車場を借りる必要がないので、このケースのように車が必要な場合には有利です。

このような戸建て住宅は土地の広さや建物の大きさを変えることで価格を調整することができます。
駅から遠くてバスを使うような場合は広めの土地が、
少し無理をすれば駅まで歩けるような場所なら小さめの土地が売りに出されていることが多いと言えます。

実際Yahoo不動産などで新築一戸建てを検索してみると、5,000万円で100㎡くらいの戸建ての物件がたくさんあります。

 

ここでは、5,000万円の一戸建てを購入すると仮定しましょう。

貯金などで1000万円を用意し、残りの4,000万円を35年ローンで借りたとします。

 

頭金:                                             1,000万円

借入金:                                          4,000万円

ローン金利:フラット35の固定金利 年利1.1% として35年間で約930万円

取得費用(ローン手数料、保証料、登記費用など): 約200万円

固定資産税:                                  10万円x35年=350万円

補修・リフォーム:                        築15年、30年の2回 300万円x2=600万円


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歳までに必要な金額は                      約7,080万円

 

ローン完済後も同じ家に住み続け、85歳まで生きたとすると、その時には築45年になりますので相当傷んでくるとは思いますが、何とか住めるレベルだと思います。

85歳までの固定資産税:                        10万円x10年=100万円

を含めると、85歳までに必要な住居費はおよそ7,200万円となります

 

このときに建物の価値はゼロですが、土地の価値は残ります。

 

 

賃貸の場合

一般的に住宅を賃貸に出す際には、その物件の売買価格の4%程度を年間の賃料とするケースが多いです。
一戸建ての賃貸は多くの場合、もと住んでいた人の都合で賃貸に出すケースが多いので、新築時の5,000万円の価値はありません。
中古での売買価格が基準となりますので、高くても4,000万円の4%で年間家賃は160万円、月にすると13万円程度の家賃になると思います。

 

月13万円の賃貸住宅に85歳まで45年間住むと、支払う家賃の合計は7,020万円となります。

 

このように、購入しても賃貸を続けても、一生の間に住宅にかかる費用は大きく変わらないことがわかります。

 

一戸建ての場合は、高齢になって死亡した際、建物の価値はゼロになっても、土地の価値はそのまま残り、子供が資産として相続したり、売却したりすることができるので、購入するのが有利であると考えられます

しかし、土地の価値や価格は、その場所、形や大きさ、そして何十年後の不動産市場の様子に大きく左右されます。
日本全体としてみれば人口減少はつづくと予想されており、今後住宅は余ってくると考えられますので、どんな場所でも今後土地が値上がりすると考えるのは無理があります

 

したがって一戸建てを購入する場合は、賃貸に比べると土地の価値の分だけ経済的なメリットがあるとも言えますが、将来にわたって土地の価値が維持されるような場所であることが条件となります。

 

このようなケースシミュレーションの結果からわかることは、

経済的な比較(金額の多い少ない)では購入も賃貸も大きくは変わらない

ということです。

それでは何を元に賃貸か購入かを決めればいいのでしょうか?

それはその人のライフスタイルと住まい方です。

 

賃貸に向いているライフスタイルとは?

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家族に子供がいる場合は、
子供の学校に合わせて住む場所を考えたり、
子供の成長に合わせて部屋数が必要になったりと、
ライフスタイルや住まい方に大きな変化が生じます。

なんとなく、「子供が大きくなったら家を建てて庭で一緒に遊びたいなあ」というような夢から、子供の成長というライフスタイルの変化に合わせて住宅の購入を検討する人も多いと思います。

しかし、実際はこういったライフスタイルの変化に伴い、必要な住まいも変化していく場合は賃貸住宅が適しています。
子供の学校が優先される時期はその学校にアクセスの良い場所を選んで住んだり、
子供が成長したり、独立したりすれば夫婦の共通の趣味や興味を優先した場所に住んだりと、柔軟に住む場所を選ぶことができます。

また、子供が小さい間は少し狭い住宅で我慢し、大きくなったら広い住宅に引っ越す。
また子供が独立すれば、夫婦だけで少し狭いけれど都心の便利なところに住む、
というようなこともできます。

もし住宅の購入を前提にこういったことを行ったとすると、住宅の売買が何回も必要になり、そのたびに不動産業者への仲介手数料やローンの借り換え手数料、登記費用などが数百万円単位で発生してしまいます。

ただし、この場合の問題点もあります。
それは自分のライフスタイルに合った賃貸物件が見つけられるかどうかということです。

自分の希望する場所に物件を見つけても、なかなか家族のサイズに合った広さのものがなかったり、築年数が経っていてオートロックなどのセキュリティーがなかったり、設備が古くて毎日不便な生活をしないといけなかったりということがあります。
また、子供の学校への入学などのタイミングに合わせて希望する物件が見つけられるかという問題もあります。

このように賃貸の場合は、自分のライフスタイルに合った物件が見つかるかどうかということが大きなポイントとなります。

場所や住まい方などが明確に決められるのであれば、その地域の不動産屋さんに自分の希望を伝え、その希望がかなう物件が出た場合にはすぐに判断をする準備をしておくことが必要です。

 

購入に向いているライフスタイルとは?

では住宅購入に向いているライフスタイルとはどういうものでしょうか?

ケーススタディのように子供がいない夫婦の場合は、子供のいる家庭に比べればその変化は小さいと思います。
こういった場合は早めに購入を検討することによってよりお買い得な価格で住宅の購入が可能になります。

将来値上がりしそうな場所に狙いを定めて物件を購入することで、長年にわたって高い住宅の価値を保つことができ、最終的に手元に残るお金が多くなる可能性があります。
自営業に比べて長期間安定した収入が期待できる会社員や公務員なども購入を検討するといいでしょう。
自分や家族の理想のライフスタイルが非常に明確な場合、

例えば庭でガーデニングがしたいとか、
インテリアや特殊な設備に絶対にこだわるといった
自分のこだわりのライフスタイルを実現するためには
注文住宅を新築したり、改装や改築が必要となったりしますので、
購入を検討したほうがいいでしょう

 

賃貸、購入のメリットとデメリット

賃貸

メリット:

メンテナンスの費用が不要。
地震などで建物に住めないような被害があっても引っ越せば済む。
家族構成や状況の変化に応じて自由に場所や広さを選べる。
購入に伴うまとまったお金(頭金だけではなく、登記やローンの手数料など)が不要。

デメリット

改築などができない。(もしした場合は明け渡すときに原状復帰が必要)
自身のライフスタイルに合った物件が見つけにくい(少ない)

 

購入

メリット

ステータスになる。
物件によっては中古でも高く売れてより多くのお金を手にすることができる。
資産として子供などに残せる。
リフォームやリノベーションが自由にできる。

デメリット

長期間にわたるメンテナンスの費用が必要。(一戸建てなら屋根や壁の塗り替えなど、マンションでは毎月の長期修繕積立金)
ボイラーやガスコンロなど設備機器の老朽化に伴う更新(交換)の費用が必要。

 

まとめ

賃貸住宅に住み続けるか購入するかを決めるためには、
それぞれの人とその家族が「こういうところに住みたい。」とか「こういう暮らしがしたい。」という希望やプランをはっきりさせることが大切です。

金額的な比較は、これからの日本の経済状況がどうなるかによって大きく変わるので、これを元に判断をしようとしてもきっと結論が出ず、なんとなく「周りもマンション買ったからウチも買おうかな」といった程度の動機で購入にするかもしれません。

もちろん購入も、その資産を有効に活用することもできますので、悪い選択肢では決してありません。

しかし、これから日本は人口がどんどん減っていきます。すでに特に地方都市では空き家が増えて防犯や防災上問題になってきていますし、これからも住宅が余る状況は続いていくでしょう。
昔のように「不動産は必ず値上がりするから資産として持っておいて損はない」というセオリーは通用しなくなってくるかもしれません。

このような状況であるからこそ、本当に自分たちが手に入れたい生活はなにか、どんな人生をおくりたいのかということをベースに、それを実現させるため手段として住宅を考えると、自分と自分の家族にとって最もふさわしい選択肢が見えてくると思います。

 

参考

自分の希望に合う住まいを探したいのなら、

タウンライフ不動産

のサイトから依頼をすると、自分にあった不動産会社を選んで依頼することができます。

 

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